スタインウェイの謎

スタインウェイとは、ピアノの製造メーカーのこと。 そのスタインウェイに惚れ込んだ調律師と、日本国内でスタインウェイを専売・メンテをしていた神戸の会社の、、、攻防戦のお話。

また何で、こんな本を読んでるかと言いますとー

私は音楽のことは何も知りませんし、絶対音感もなく、音楽とは縁の薄い家で育ちました。

でも、スタインウェイの古いピアノを2台知っています。 その2台の、余りの個性の違いから、元々好きだったピアノのという楽器に、別の拘りが出来たからなんですね。

私の知ってる古いスタインウェイは。 1台は、京都の小学校にある120年以上前のミニグランド。 住民達が自分達の子供のために、お金を出し合って買ったもの。 そして、廃校になるまでずっと音楽室で代々の生徒・先生に愛されてきました。 象牙の鍵盤もすり減り、弾く人がいなくなって音も若干狂ってしまったミニグランド。 それでも、優しく暖かく、伸びやかな音色は今も覚えています。

100人いたら100人が《良い音》と答えると確信するに足る、素晴らしいミニグランドの音色は、私が知るピアノの音とはまるで違いました。

私が《ピアノの音=ヤマハのピアノの音》だと思い込んでいたことに気づいたキッカケにもなりました。 公立学校のピアノはヤマハばかりですものね。

もう1台は神戸の調律師が、再構築した140年前のフルグランド。 煌びやかな華やかさのある、明るい音色。 同じスタインウェイの、同じ頃のピアノのはずですが、ミニグランドとは音質が全く違いました。

何でなんだろう??

この140年前のフルグランドは、かなり傷んでいたらしく、中身の金属やハンマーなどは全て取り替えられてしまっているようですが、、、 外観の木の部分はオリジナルのもの。 楽器ですから、木の部分も大事な音の要素のはず。

そんな疑問から、ピアノのという楽器が、実は木と金属で出来た《工芸品》でもあるのだという視点ができました。

ピアノにも、メーカーや個体によって個性があるのです。

それがストンッと飲み込めました。 とても新鮮な驚きでした。 そうして振り返ってみれば、どうしてそう考えたことがなかったのか。 逆にそちらの方が不思議になったくらいです。

その理由にも、何と無く想像がつきます。 ヤマハの高い技術力の功罪だと思います(⌒-⌒; )

私はヤマハピアノが《ピアノの音》の基準になっているのです。

ヤマハのピアノに、バラツキが少ないことは、ピアニストや調律師のエッセイを少し探せば記述が出てきます。 そして《ヤマハの音は重厚》という記述も。 それは、スタインウェイの個性とは真逆で、初めて聴いた時に《何だろう、このピアノは!?》と思ったのでした。 そこから、私のピアノへの拘りがもうひとつ増えることになるわけです。

この本の中にも、私の疑問に答えをくれることが沢山書いてありました。

《どうして、私の知ってるスタインウェイと、何処かのホールで聞くスタインウェイの音が違うんだろう?》 どうも腑に落ちない。

色々、諸条件揃えて聴いたわけではないけど、ホールのスタインウェイは古いスタインウェイと違う気がするのです。

何でも、昔の方が良かったとは思いたくはないですが、こと、《工芸品》に関してだけは、残念なことに、そのように思えてなりません。